期限のある手続き
相続が発生すると、様々な行政上の手続を一定期限までに着手する必要があります。
ここでは、相続が発生して3年10ヶ月以内に処理すべき手続きを解説したいと思います。
死亡届、相続方法、所得税の準確定申告、相続税の申告などの主な手続きを見てみましょう。
7日以内にやらなければならないこと
死亡届
死亡後7日以内に医師の死亡診断書を添付して、住民票のある市区町村の長に提出します。
3ヶ月以内にやらなければならないこと
相続放棄
相続人が被相続人の財産及び債務について一切の財産を受け入れないことを「相続放棄」と言います。
例えば、被相続人のマイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合に、「相続放棄」をすることによって負担を免れることができます。
これで借金を負担しなくて済みます。
これには家庭裁判所に申し出ることが必要です。
限定承認
被相続人の財産を全て無限に承継することを「単純承認」と言います。
これに対し、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を承継することを「限定承認」と言います。
借金の額がその時点で把握できない場合に使います。
これも家庭裁判所に申し出ることが必要です。
4ヶ月以内にやらなければならないこと
所得税準確定申告
不動産所得や事業所得などの所得税の確定申告が必要な人は通常、翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告を行いますが、個人が死亡した場合には、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得を確定申告(準確定申告と言います)しなければなりません。
所轄の税務署に申告します。
この申告は相続人全員が納税者となり、被相続人の所得税の申告を行う義務があります。
10ヶ月以内にやらなければならないこと
相続税の申告
被相続人の遺産に対して相続税がかかる場合には、相続開始を知った日から10ヶ月以内に相続人全員が相続税の申告をしなければなりません。
相続税は相続人1人1人が実際に取得した財産に対して相続税が算出されるため、申告期限(10ヶ月)までに遺産分割協議が相続人間で整っていることが前提になります。
原則的には遺産分割協議も10ヶ月以内ということになります。
なお、遺産分割が10ヶ月以内に整わなかった場合には、民法に規定された相続分で財産を取得したものとして相続税の申告を行い、分割が決まった時点で、改めて申告を行なうことになります。
この場合、配偶者の税額軽減の特例等の有利な制度が利用できませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限後3年以内(相続発生後3年10ヶ月以内)に分割されれば、特例の適用を受けることが出来ます。
相続税の納付
相続税を現金納付する場合には10ヶ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納(国に借金する事)や物納(物で納める事)も申告期限(10ヶ月)までに申請書を提出し、許可を受けなければなりません。
1年以内にやらなければいけないこと
遺留分の減殺請求
民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分(=遺留分)が保証されています。
万一、遺言によって遺留分未満の財産しか貰えなかった場合には、遺留分を侵した相手に対して、相続の開始から1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。
3年10ヵ月以内にやらなければいけないこと
相続税の特例適用のための分割期限(申告期限後3年以内の分割見込書)
相続税の軽減特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」、「特定事業用資産の特例」の適用は、遺産分割協議が整っていることが適用要件となっているため、申告期限(10ヶ月)までに協議が整っていない場合には、適用ができない内容の申告となります。
その後、3年以内に協議が整えば、その時に特例を適用する申告内容に訂正することができます。
相続財産を譲渡した場合の所得税の譲渡の特例(取得費加算)は、その譲渡が相続税の申告期限から3年以内に行われたときだけに限られています。
以上、期限のある手続きについてお伝えしましたが、全部を行う訳ではありません。
ただし、知らなかったでは済まされないのが、この期限のある手続きです!
もしも、日程が迫っているが時間の調整がつかないという方は、すぐにお問合せください。